A棟管理組合結成を導いたオーナー会発起人たちが、集会開催の案内文言に、「我々は、自分自身をも深く反省しなければなりません」と書いたのは、正しい。

案内書には、施設構造の特殊性から、「C八王子」全体の管理組合結成へ向けて動く必要性も記されていた。 大口オーナーもいれば、一室を共有する細区分所有のオーナーもいる「C8王子」のもう一つの特殊性を考えれば、利害の調整は一朝一夕には片づかない。
それにしても、ともかくオーナーたちは、「自分の財産は自分で守る」べく動きだしていたのである。 ところが余計な邪魔者は、そういう流れを妨害し、オーナーたちの結束をも乱していく。
余計な邪魔者とは。 いうまでもなく新たに出現した管理会社「Rカレッジタン」であり、それを社名変更した「(株)C」であり、その代表取締役SRCがオーナーの前に姿を現したのは、Rが倒産する前すでにその時、R内部においては、倒産も視野に入れた対応策が練られていた可能性も指摘できる。
Rが駄目なら、RCを「カレッジタウン八王子」の受け皿とする。 それはTの描いた生き残り策であったようにもみえる。
けれども彼は同年8月23日、他のR子会社とともに同社の全株をSに譲り渡していた。 「自主運営」を伝える92年4月20日付の文書の送付が、T、Sどちらの指示であったのかは判らない。

R倒産直後のTの行動は不可解だ。 倒産から3日後の92年4月24日、Tがみなと建設事業協同組合事務所にMを訪ね、「管理を継続して行わせてほしい」と懇願したことはすでに述べた。
しかし4日後の4月28日、TはA棟管理組合の理事会役員(オーナーの会理事会役員を兼務)15人と東京・渋谷の喫茶店「ルノアール」地下一階の会議室でである。 同社はその前年の91年1月31日に設立されている。
だが、「C八王子」を含むRのマンション物件の管理はすでに子会社「ヤング・イン」が担っていたはずである。 なぜ、新たに管理子会社を設立する必要があったのか。
92年4月20日である。 オーナーへ、賃料の振込み方式の変更(入居者からの直接振込)とともに、同社が親会社のRから独立し「自主運営」を進める方針を伝えてき面談し、申し出ている。
「自分自身にはすでに当事者能力がもはやないのでオーナーによる自主管理をお願いしたい。 そしてRも一部専有部分があるので管理組合に入れてもらいたい」「できることなら残った従業員を管理組合で使ってほしい」と、オーナー側に下駄を預けている。
A棟管理組合理事会は、Tの影響力が残ることを警戒しつつもこれを受け入れ、一件落着と判断。 自主管理・運営の方向を目指し、弁護団を結成するなど準備を始めた。
だが実は、敵はもはやTではなくなっていた。 当時、Rを取り巻いて有象無象が跳梁していた。
Tはその渦中で、すでに経営の実権を徐々に奪われていったようだ。 「B&B」株を手中に収めた振興開発の拠点、仙台市でその筋の人間たちよるR分割会議が行われたのは、その翌日であった。
Mが得た情報によると、C八王子」は一応、Tの許に残すことになった。 ところが、その後、Tが何らかの約束違反をしたらしい。
TはSに軟禁状態に置かれ、実印などもすべて取り上げられたという。 TはSとの主導権争いに破れ、完全に実権を失ったのだろう」Mの情報を裏付けるように、およそ一カ月後の5月3日、Rは「(株)C」(以下、C社)と商号変更され、旧社時代は共同代表その一ヵ月の間にも、オーナーたちの結束は進展しつつあった。
A、B、C3棟の間で「連絡代表者会議」を設け、情報交換とともに自主管理・運営の具体的検討に入り、6月4日には、川口のA宅でA棟代表・A(管理組合およびオーナーの会理事長)、B棟代表・M(オーナー会社専務)、C棟代表・Mの間で「C」の共同管理に関する協定」の締結に合意。 A棟では翌5日、管理組合理事会で承認を得る運びとなっていた。

「協定」案は弁護士のTが書いたものだが、そのなかで自主管理・運営の方向が確認され、そのため「3棟協議会」の設立までもが提案されていた。 事態は一夜にして暗転する。
当日になって、突然、A棟管理組合の弁護団団長にも選任されていた弁護士の提案によって、A棟管理組合理事がSと会見するという事態が発生し、「協定」案の承認は流れてしまった。 代表取締役にS一人が就任し、表舞台に登場した。
社長Tがオーナーによる自主管理・運営を願い出ていたにもかかわらず、同社は「管理権」を主張。 以降、A棟一階の集中管理室に居座り、自主管理・運営を目指すオーナーの前に大きく立ちはだかることになる。
ちなみに同社取締役にRの常務取締役であったAが名確かにそれ以前に、Tに代わってSが実権を握ったとの情報を得た。 A棟管理組合理事的A棟管理組合理事との会談で、Sはおおよそ次のように説明したという。
「私はRに対し100億円以上金を出しているので、「C八王子」を運営する権利を持っている」「経理の内容がめちゃくちゃでその内容を把握するまで2、3ヵ月かかる。 それまでオーナーの方には何の約束もできない」C棟協議会発足、取戻しの現場行動への有志が、Sとの会談を打診していた事実はあった。

それにしても、「3棟協議会」路線を承認しようというその日の会談はいかにも唐突、不自然である。 弁護士の提案の裏に、Sの工作があったのか。
それとも先行きに対する不安や焦りで管理組合理事の心にSへの依存心が芽生えた結果の行動だったのか。 いずれにしても、ようやく固まりつつあった「3棟協議会」路線は一時、暗礁に乗り上げてしまう。
A棟管理組合ではこのあと、網谷理事長が辞任し新体制が生まれる。 けれどもそれ以降も、方針をめぐる内部対立が折りにふれて表面化した。
また、B、C棟の内部や相互間でも微妙な軌喋が生じ、強大な敵に対する闘いの困難さを幾度となく経験させられる。 その間の粁余曲折については後にまとめて詳述しよう。
ここでは、それでもなお不法な占拠者に立ち向かったオーナーたちの闘い、攻防の軌跡に話を絞ろう。 「3カ月経営して駄目だったら手を引いてもよい」Sになにがしかの期待をつないで会見に臨んだであろう。
当時のA棟管理組合理事も、これでは失望したに違いない。 あまりに一方的かつ虫のいい内容だった。
一カ月後の7月3日、Sは、前節でも多少触れたがオーナー一人ひとりに長文の文書を送付して、Rとの関わりから「C八王子」の経営を引き継ぐまでの経緯、さらに今後の方針や現状での問題点までを酒々と展開。 大口債権者の立場を改めて強調し、「C八王子」の運営に強い意欲を示した。
それに付け加えて、自ら「50億円の融資をしている」という同地北側にあるR所有の3000坪の土地を利用した、「C八王子第2期開発」構想まで披露してみせた。 だが、Sが「C八王子」と関係する根拠はどこにもない。
100億円の大口債権者で運営権を譲渡されたというが、100億円融資はRに対してのものである。 「C八王子」の本来の所有者であるオーナーとは何ら関係がない。
G社自体の経営権はあるにしても、それがそのまま「C八王子」の「運営権」という権利につながるものではない。 オーナーがRとの賃貸借契約を破棄すれば、雲散霧消するべき性質のものである。

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